【志縁塾物語】 その2:八千代町編

 前半は、みんなで新喜劇を作って、町の人たちの前で発表会をやった。人は、「笑う楽しさ」「笑わせる楽しさ」「笑われる楽しさ」が分かると殻が破れる。何よりも新喜劇をみんなで作ることによって、
チームワーク作りが学べるし、いつのまにか、みんなでワイワイやっているうちに初めて出会ったメンバーどうしが本音で話せる関係になって行く。人が変わって行く瞬間を見ることができるのが、
研修の一番の楽しさである。

 後半は、仲良くなったメンバーで、町おこしを考える。「やっぱりこれからは、インターネットかも」ということで、インターネットで町のPRをすることにした。何が楽しいかというと、リーダーが、その場、その場で変わること。前半、グイグイ引っ張っていたリーダーが後半もそうかというと、そうじゃない。逆に、前半、全く目立たなかった人間が、すごくホームページに詳しくて、いつのまにか、彼がみんなのリーダー
になっていたりする。


そんな中で役場の伊藤くんが、「大谷さん、何もホームページって、町のPR以外にもいっぱい使えますね」と言い出した。
「何がしたいの?」
「僕、消防団のPRをしたい!」。彼は、前から消防団に燃えていた。
「地方には、無くてはならない存在なのに、最近は、『めんどくさい』
と人が入ってくれない。それを何とかしたい」と、言っていた。
「キャッチコピーは、『集まれ、イケメン消防団』かな」。
みんなでワイワイと、誰かが思いついたものを形にして行く。その中で、1人、また1人と自信がついて行く。わたしは、この姿を見ているだけで、ウルウルしてしまう。


 いつのまにか、一番若い役場のメンバーまでもが、自分の意見を持って語るようになっていた。森位町長が、「大谷さん、わしは、あいつらが、自分の意見を言ってくれるようになっただけで、満足だよ」と、言ってくださった。


 人づくりに答えなんてない。「大谷さんとこに研修を依頼したら、組織にどんなメリットがあるんですか?」と、よく聞かれる。正直、わたしにも、どんな答が出るか毎回分からない。ただ、わたしは、毎回、目の前のことに一生懸命なだけである。


そして、今度は、山形の酒田南高校からの依頼だった。


(つづく)