第8話:ヤンキーが街の主役に!

『ヤンキーが街の主役に!』

 京都の京北町の町長と役場の課長からの依頼で京北町リーダーズ
カレッジを立ち上げることになった。人口6千人の平均年齢60歳
くらいの町だった。初年度は、そこそこ町のリーダーを巻き込んで
何とかそつなくこなした。その年、後ろで人集めなどをしてくれた
のは、役場でわたしと同じ年齢の大東くんだった。

 その大東くんが、言った。

「若い子たちが町づくりにかかわってくれなければダメ」

ということで、役場の25歳の岡本くんに白羽の矢を当てた。彼が20人ほどの仲間を集めてくれた。そして、岡本くんが言った。

「大谷さん、分ってるか?俺らの町って、俺らの年齢で賢いやつはみんな、東京か大阪か京都やで。今、残ってる俺らの年齢って、みんな元ヤンキーか悪さしてたやつやで」


 初日、役場に並んだ車、改造車がいっぱい。ニッカポッカの衣装にしゃべる話題は消防団。ここに、ティーチは無かった。ひたすらコーチング。「君ら、なにしたい?」最初は、「???」だった彼ら。わたしも、何回もお金を町に返して「辞めたい」と、思った。でも、半年を過ぎた頃から、彼らがポツリ、ポツリ語りだしてくれた。

「僕、ほんまは、この町好きやねん」
「俺、この町、元気にしたいねん」

一年後には、彼らが、町の若い子たちを集めてイベントをやるだけでなく、わたしのリーダーズカレッジの他校まで手伝ってくれるようになった。そして、今では、みんなそれなりに立派なリーダーに。そんな中で、25歳の大工の東くんが言った。

「俺ら中途半端やけど、みんなで、何かやったら、中途半端でなく
なるんですね」

今、彼は、一級建築家としてこだわりの家を建てている。


 そして、彼らは、世界で一番大きな水車の名前「ペルトン」という名前を自分たちにつけて、「俺らが中心になって町を元気にするねん」と、活動している。わたしは、彼らに、誰でも心の中に秘めたものをいっぱい持っていることを教えてもらった。


つづく

第9話:帰ったら、私の机はダンボールに