第2話:人生を変えた出会い系サイト

『人生を変えた出会い系サイト』

 大和銀行(現りそな銀行)から何とか震災後の運転資金を借りることができたけれど、そのお金を全て運転資金や人件費に使ってしまうことって、すごく寂しかった。何か未来のために使うことをしたかった。


そして、10年前、「これからはインターネットの時代」と、ささやかれ始めた頃だった。「本当かなあ・・・」と、思いつつも、清水の舞台から飛び降りるつもりで、一台のパソコンを買うことにした。

 買ったのは、富士通のFM-V、当時、ソフトや何やかやで約100万円近くした。そして、パソコンのことは、何も分からないわたしのために友人がセッティングしてくれた。「大谷さんも今日からインターネットに電子メールやね」と、彼は言った。でも、彼が帰った後、気づいた。見るホームページなんて当時何も無かった。電子メールを書く相手もいない。


 だけど、わたしにしたら、このパソコンを無駄にするわけにはいかない。未来のために使わなければならなかった。で、「出会い系サイト」に書き込んだ。「34歳のイベントプロデューサーです。いろんな人と情報交換したいです。」そんなわたしの書き込みにメールをくれたのは、同年代で自宅でパソコンを持ちながら、わたしと同じことを考えていた男性たちだった。


 「僕もいろんな人と情報交換がしたかった。でも、20代の女性にメールを書く勇気も無いし、かといって、男同士というのもちょっと気持ち悪いですよね・・・」


 そんなメールをくれたのは、官僚にSEに外資系金融のメンバーが、ほとんどだった。それまで、イベントプロデューサーだったわたしにそんな友人はいなかった。「僕は、霞ヶ関で働いています」というメールに、最初わたしが書いたメールは、「わたしは、谷町4丁目で働いています」官僚なんて人たちとは、全く縁が無かった。「僕は、M&Aを仕事にしています」と言われても、「チョコレートの名前と違うの?」。


 それまで、わたしは、日経新聞なんて読んだことも無かったし、官僚にも政治にも全く興味なんて無かった。「アンパンマンかセーラームーンか、どっちのほうが、客が入るかなあ」が、悩みだった。「こんな人がいてたんだー」正直、驚いた。


 えらいこっちゃ。自分のことだけを見ていたらあかんのと違う?世の中は、動いてる。もっと、外のことも見なきゃ。メール交換を続けて行くうちに、どんどん、自分の世界が広がって行く自分に気づいた。そして、吉本興業とジョイントして「よしもとリーダーズカレッジ」を立ち上げた。「世の中って、広いねんでー」と、いうことをみんなに伝えたかっただけだった。


つづく

第3話:私の役は吉川十和子。